【本】暗幕のゲルニカ(ショート備忘録)
私はきっと、「知識」「さまざまな感情」「驚きの展開」の三拍子揃った小説が好きなのだ。
「知識」・・・知らない世界を教えてくれる
「さまざまな感情」・・・色んな考えや価値観の人がいる
「驚きの展開」・・・ストーリー構成の技術そのものに、感動する
私の原田マハさん作品の入り口は『楽園のカンヴァス』、
上記の三拍子でいうと、近藤史恵さんの『サクリファイス』も好き。
さて。
著者のアカデミックな背景からして言うまでもないが、
美術史、現代史への深い造詣や洞察を随所に感じられる。
なおかつそれは、教科書のような事実の羅列ではない。
推理小説のようなスリルや臨場感も相まって、
生き生きと伝わってくる。
結末は正直衝撃の強さはなかったが、
設定が世界大戦時と現代とを行きしながら、一つのテーマ、
アートで戦争に立ち向かうこと(いわゆる「ペンは剣より強し」)への
強い希望でまとめ上げられている点は見事である。
ただ思うに、「ペンは剣より強し」というのは、
現実は「剣はペンより強い」からこそ生まれ使われている
逆説的な言葉なんだろうなと。
以上