あゆみより

今日食べたもの、観た映画、飲んだ酒、読んだ本、考えたこと。

【本】暗幕のゲルニカ(ショート備忘録)

 

 

私はきっと、「知識」「さまざまな感情」「驚きの展開」の三拍子揃った小説が好きなのだ。

「知識」・・・知らない世界を教えてくれる

「さまざまな感情」・・・色んな考えや価値観の人がいる

「驚きの展開」・・・ストーリー構成の技術そのものに、感動する

 

 私の原田マハさん作品の入り口は『楽園のカンヴァス』、

上記の三拍子でいうと、近藤史恵さんの『サクリファイス』も好き。

 

さて。

著者のアカデミックな背景からして言うまでもないが、

美術史、現代史への深い造詣や洞察を随所に感じられる。

 

なおかつそれは、教科書のような事実の羅列ではない。

ピカソゲルニカを取り巻く全ての登場人物の感情を乗せ、

推理小説のようなスリルや臨場感も相まって、

生き生きと伝わってくる。

 

結末は正直衝撃の強さはなかったが、

設定が世界大戦時と現代とを行きしながら、一つのテーマ、

アートで戦争に立ち向かうこと(いわゆる「ペンは剣より強し」)への

強い希望でまとめ上げられている点は見事である。

 

ただ思うに、「ペンは剣より強し」というのは、

現実は「剣はペンより強い」からこそ生まれ使われている

逆説的な言葉なんだろうなと。

 

以上